機械製品などを船便で海外へ運ぶ際、長い場合だと、輸送に1〜2ヶ月かかることがあります。輸送距離が長いので、その分、破損リスクも増大。また、海上輸送は気温差が大きく、高い湿度にさらされることも多いので、サビの発生は常に直面する課題でした。そこで、これらリスクを払拭し、大切な製品を無事海外へ届けるための取り組みがスタート。
サビの発生を防ぐため、空気に触れないよう、機械製品をビニールで包み、輸出用パレットに載せ、ズレないようにボルトで固定していましたが、ごく稀に、ボルトが折れたり、緩んだりするという事態が発生。人によってボルトを締め付ける強さが異なり、締め付け力に過不足が発生していたことが原因でした。そこで、誰が締めても同じ締め付け力が保てるよう、基準を決め、それを徹底することにしました。
ボルトが折れるのは、締め付ける力が強過ぎるのが原因。そこでコンプレッサー(強い圧力をかけて気体を圧縮し送り出す装置)とボルトを締める機械の間に、高圧な圧縮空気を適正な数値まで減圧するレギュレーターを設置。締め付け力が一定数値を超えないようにしました。
締め付け力を一定にしても、使用する道具によって誤差が発生。また、これまで締め付け加減は、人の勘と経験に頼る部分が大きかったので、適正だと思う強さが人によってバラバラでした。そこでベテラン社員の力を借り、ボルトを締めては計測する、を繰り返し、適正な締め付け力を数値化しました。
数値化した締め付け力を、ベテラン社員が経験の浅い社員に対して、丁寧にレクチャー。数値化しても微妙なバラツキがあったので、安定するまで梱包したら確認・修正する、を粘り強く繰り返しました。その結果、作業精度が大幅にアップ。ボルトに関する問題は限りなくゼロに近づき、機械製品が空気にさらされることもなくなりました。
数値化し、みんなの作業が安定するまで、約1ヶ月かかりましたが、作業精度が劇的に改善したのは、現場で働く社員たちのお陰。「どうすれば、できるのか」という問いに、みんなが前向きな気持ちで取り組んでくれた結果です。これを機に、品質に対する意識も向上。みんなが、これまで以上に細部にまで気を配るようになったので、包装の仕上がりが以前に増して綺麗になりました。その結果、サビの発生リスクも大幅に軽減しました。
私が日々心がけていることは、部下に「やってほしいこと」を頭ごなしに言うのではなく、その理由を伝え、「どうすればできるか」を、まずみんなに考えてもらうことです。毎日する仕事だからこそ、納得してやってほしいし、自分の行動によって引き起こされる変化を、当事者として楽しんでほしいから。また、自分もみんなと一緒に作業をしてみて、「なぜ、そうなるのか」「どこが難しいのか」をきちんと理解した上で、話をするよう心がけています。そうじゃないと、本当の課題が見えてこないし、現場の声には常に耳を傾けていたいからです。